サントリーグループは、清涼飲料、酒類、健康食品など、幅広い領域で事業を展開する食品酒類総合企業です。サントリー天然水、ザ・プレミアム・モルツ、サントリーウイスキー響、サントリーシングルモルトウイスキー山崎、セサミンEXなど、多くのブランドを国内外で展開し、生活者に新たな価値を届け続けています。こうしたブランドを知的財産の面から支えているのが、サントリーホールディングス株式会社 コーポレートマネジメント本部 ブランド知財マネジメント部です。同部門は、商標を中心に、著作権、不正競争、模倣品対策などを担い、単に権利を取得するだけでなく、ブランドを守り、活用し、事業に貢献する役割を担っています。近年では、事業部門と共にマーケティングプランの策定や商品開発会議に参加し、商標リスクを早期に把握する取り組みに加えて、グローバルブランド展開における商標クリアランスや、社内に知財を浸透させる「ゆるっと知財バー」の開催と、ブランド知財マネジメント部の活動領域はさらに広がりを見せています。今回は、サントリーホールディングス株式会社 コーポレートマネジメント本部 ブランド知財マネジメント部長の山本 敬一(やまもと けいいち)氏に、組織体制、事業部門との連携、グローバルブランドを支える商標実務、AI活用、予算設計、社内発信、人材育成、そして今後のブランド知財マネジメント部のあり方について伺いました。山本 敬一(やまもと けいいち)氏 プロフィールサントリーホールディングス株式会社 コーポレートマネジメント本部 ブランド知財マネジメント部長大学院で知的財産を専攻後、サントリー株式会社(現:サントリーホールディングス株式会社)へ入社。新卒から一貫して商標業務に携わり、ブランド・商標領域を中心にキャリアを重ねる。2025年4月より現職。現在は、サントリーグループのブランドを知的財産の観点から保護・活用し、事業成長を支える取り組みを推進している。ブランドをマネジメントする専門組織としての役割–まず、ブランド知財マネジメント部の現在の組織体制と、その背景についてお聞かせください。山本氏:当社の組織は、この20年ほどの間にさまざまな変遷を経ています。もともとは、2003年に初めて知的財産部が設けられました。それ以前は、特許を担当する部署として特許情報部があり、商標担当者は法務部の商標グループに所属していました。当時、知的財産にしっかり取り組んでいこうという流れの中で、知的財産部が生まれたという経緯があります。その後、2015年頃に現在に近い体制になりました。単に商標権を調査、出願、取得するといった業務だけでなく、それを活用してブランドを守っていくことを重視する考え方のもとで、今の体制になったと理解しています。現在も、その考え方に基づいて活動しています。–「商標部」ではなく、「ブランド知財マネジメント部」という名称にされた背景には、どのような意図があるのでしょうか。山本氏:「商標部」という名称の場合、商標という道具と言いますか、そのものに焦点が当たりやすいと思います。ただ、それをどう活用し、マネジメントして事業に貢献していくのかという「行動面」までは、部署名に十分表れていませんでした。ブランドの視点から知的財産をマネジメントし、事業に貢献していく部門であることを打ち出すために、現在の名称になっています。少し長い名称ではありますが、部門としての役割を表すうえでは意味があると考えています。–特許や意匠を担当する部門とは組織が分かれているとのことですが、連携についてはどのように考えていますか。山本氏:そこは一長一短があると思っています。知的財産という括りで考えれば、特許、意匠、商標を近くで連携して扱うことには意味があります。たとえば、サントリー天然水も、ペットボトルの強度を保つための特許、ボトル形状に関する意匠、ブランドを示す商標など、知的財産ミックスで守られている商品です。そうした商品については、近くで一緒に考えたほうがよいという考え方もあります。 山本 敬一氏(サントリーホールディングス株式会社 コーポレートマネジメント本部 ブランド知財マネジメント部長)ただ、組織が離れていても連携はできると思っています。現在も、特許を担当している知的財産部とはフロアこそ違いますが、月に1回、定期的に打ち合わせを行っています。また、案件が発生するごとに、気になることがあれば共有し、それぞれの役割のもとで対応しています。現在のブランド知財マネジメント部は、法務部、コンプライアンス、リスクマネジメントといった部門と一緒にあります。知的財産部に所属していたときとは違う情報が入ってくることもありますし、最近では一つのインシデントに対して、一つの部署だけでは対応しきれないケースも増えています。その意味では、さまざまな部署の専門性を持ち寄って課題を解決していく体制には、面白さがあると感じています。どちらがよいかを一概に言うのは難しいですが、現在の体制だからこそ得られる情報や連携もあると思っています。–これまでの組織編成を踏まえて、山本さんご自身はどのような体制が望ましいとお考えですか。山本氏:組織については、どのような形であっても実現しなければならないことは実現できると思っています。ただ、人のキャリアという観点で見ると、私自身は知的財産を志して会社に入ってきたこともあり、将来的には特許、意匠、商標にとらわれず、幅広い知的財産の実務に対応できる人材を育てていきたいという思いがあります。業務面では、組織が分かれていても連携はできますが、人を動かすという観点では、本部が違うと難しい面もあるので、何とかできないかという思いがあります。ただ、現在の本部にいることで、知的財産とは違う領域のメンバーとコミュニケーションを取り、異なる情報が入ってくる良さもあります。メンバーのキャリアという意味では、知的財産以外の分野に触れられることにも価値があると感じています。–知的財産部とは、具体的にどのように情報共有を行っているのでしょうか。山本氏:基本的には、ケースレベルの情報共有の場を設けています。たとえば、どのような出願をしたのか、どのくらい調査や出願を行ったのか、その月に起きたトピックは何か、といった内容の共有です。当部門は事業に近い位置にあるため、新商品情報は基本的に入ってきます。その情報を特許担当部門と共有することで、「この情報は入っていなかった」という気づきにつながり、特許担当側が事業部をフォローアップすることもあります。研究所で検討されている技術やアイデアに関する情報は、事業部門からはなかなか入ってきません。そうした情報を特許担当から仕入れて、事前にケアできることがないかを確認します。研究開発段階で何かの種が見えてきたときに、将来的に名称が付く可能性を早い段階で察知し、事業部門が本格的に動き出す前に対応を検討できる。そうした連携ができている点は、非常に有益だと感じています。–部長に就任されて1年が経過しましたが、組織運営について意識されていることはありますか。山本氏:この1年は、本当にあっという間でした。いろいろ悩みながら進めてきましたが、無理に自分の色を出そうとはあまり考えていません。これまで20年以上積み重ねてきた活動の延長線上で、今の事業や時代に求められていることに対して、どのような打ち手があるのかを考えながら進めてきました。部署のメンバーには負荷をかけている部分もあると思いますが、2年目以降は、これまでの活動にさらにアクセルをかけていきたいと考えています。事業と経営に貢献する知財部門の成果の捉え方–組織体制の中で、成果やKPIについてはどのように考えていますか。山本氏:定量面として、どれだけ調査・出願を行ったのかといった数字は追っています。ただ、それをKPIとしているかというと、必ずしもそうではありません。食品業界では、あえて識別力の低い名称を選択するケースもあります。また、商標登録ができたからといって、その商品が必ず売れるわけでもありません。そう考えると、件数をKPIとして捉えることは、本質的には少し違うのではないかと感じています。最も重要なのは、当社に属する社員として、事業や経営が実現したいことを、知的財産の観点からどのように支援できるかです。そうした貢献のあり方を何よりも大切にしています。 昨年、メンバーから「私たちの仕事がどのように評価されているのかを聞いてみたい」という声がありました。そこで、社内のクライアントに対してアンケートを行い、声を集めてもらったことがあります。結果としては、感謝の声が多かったです。「迅速に対応してくれる」といった声もいただきました。もちろん、改善点の声ももっとあればよかったとは思いますが、社内の方々に一定の評価をいただいていることは確認できました。これは、先輩方が長年にわたって商標に対する理解を社内に根付かせてきた結果でもあります。現在の経営層や本部長クラスの方々も、若い頃から商標に接する機会が多く、商標への理解が深い方が多いと感じています。それをいかに維持していくかという部分も大事です。たとえば、先行商標が見つかり、そのままでは難しいという場面があります。そのときに、単に「難しいです」と伝えるのではなく、いかにそれを克服し、NO GOをGOに近づけられるかという姿勢を大切にしています。結果的にNO GOのままであったとしても、そこに至るまでにどれだけ検討したかによって、事業部門への伝え方や受け止められ方は大きく変わります。時間はかかりますが、そうした姿勢を大切にして取り組んでいます。–経営層との接点については、どのような場を設けていますか。山本氏:ケースごとの相談はもちろん行っていますが、全社の知的財産活動を共有する場として、発明委員会と呼ばれる会議体があります。役員や各部門の部門長が集まり、年に数回、知的財産活動や解決すべき大きな課題について議論する場です。現状では特許を中心とした話題が多く、商標の話を積極的に扱ってきたとは言い切れません。ただ、今後は商標についても、こうした場でしっかり話ができる機会を設けていきたいと考えています。事業の動きに入り込む、商標実務の関わり方–ブランド価値を高めるうえでは、事業部門やマーケティング部門との連携も欠かせないと思います。どのようなタイミングで接点を持っているのでしょうか。山本氏:まず、各事業ごとに翌年のマーケティングプランを策定します。策定が完成する時期を見計らって、各部門のマネージャークラスの方に声をかけ、清涼飲料事業、ビール事業、スピリッツ事業など、各事業の戦略を個別に聞かせていただく取り組みを行っています。そこで全体的な事業の方向性や戦略を把握したうえで、個別の案件をそれぞれの担当が確認していきます。事業の全体像を理解していることは、事業部門からの受け止められ方にも、こちらの仕事の質にも関わってくると考えています。そのため、この取り組みは毎年しっかり実施しています。–マーケティングプランでは、具体的にどのような情報を確認されているのでしょうか。山本氏:基本的には商品周りの話が中心です。どのような市場環境にあり、どのような商品を出していきたいのか、そのスケジュールはどうなっているのかを確認します。事業ごとの数字も共有いただきますが、商標の観点では、今後どのような商品を展開し、どのようなコミュニケーションを取っていくのかが特に重要です。基本的な手当てはできているものが多いですが、新しく検討される名称や企画もあります。そうしたものについては、追って個別にキャッチアップし、必要な活動につなげています。–商標調査依頼を待つだけではなく、事業の流れに入り込む取り組みも進めているのでしょうか。山本氏:はい。全体的なマーケティングプランを把握する取り組みに加えて、昨年、若手メンバーが考えてくれた取り組みがあります。どうしても取りこぼしてしまう商品が出てくることがあり、それをどう減らしていくかが課題でした。そこで、各事業会社が行っている商品開発会議に入れていただくことにしました。これにより、大きな事業戦略から、そこを受けて開発される個別の商品まで、かなり細かいところまで拾える体制が出来上がってきています。商標調査依頼書だけでは得られない情報は多くあります。なぜその商品を出すのか、どのようなターゲットに向けているのか、現在の事業の状況はどうなのか。そうした付加情報を得られる点で、商品開発会議への参加は非常に貴重な機会になっています。グローバルブランド展開を支える商標クリアランス –事業部門との連携から生まれた具体的な取り組みとして、印象的な事例はありますか。山本氏:ジャパニーズクラフトジン『ROKU』と、ジャパニーズクラフトウオツカ『HAKU』があります。これらは、当社がアメリカのスピリッツメーカーであるビーム社を買収した後、初めて共同で開発し、グローバルに展開していこうとしたブランドです。『ROKU』も『HAKU』も非常に短い音節のブランド名ですので、商標実務をされている方であれば想像しやすいと思いますが、各国で障害となる商標が出てきやすいという難しさがありました。使える国もあれば、使えない国もある。その中で、事業側には『ROKU』と『HAKU』でいきたいという強い思いがありました。商標さえクリアできれば進められるという状況の中で、単に「厳しいです」と伝えるのではなく、交渉や早期審査など、さまざまな手段を駆使して対応しました。最終的には、当初発売を想定していた国をすべてクリアすることができました。私は当時の担当者ではありませんが、その担当者がニューヨークでのローンチイベントに招待されました。事業から知財の活動を評価いただいた一つの象徴的な事例だと感じていますし、一緒に働く身として非常に誇りに思いました。–NO GOをGOに近づけるうえでは、事業部門とのタイムライン共有も重要になりますね。山本氏:そうですね。商標対応にはどうしても時間がかかります。そのため、事業部門とは会議やメールでこまめにやり取りしながら進めています。どの対応にどのくらい時間がかかるのか、それで待てるのか、待てないのか。そうした点を事業側と話し合いながら進めることで、商標対応の時間軸についても理解いただけていると思います。–ビーム社のような海外企業とのブランドポートフォリオ管理では、どのような点を重視していますか。山本氏:買収した会社には、当然ながら立派な商標担当者やリーガル担当者がいます。当社としては、そうした方々の専門性をぜひ生かしていきたいと考えています。そのため、基本的には、彼らがこれまで担当してきた領域はそのままお任せするようにしています。ただし、同じような事象が起きたときに、当社と現地側で判断が大きく異なるのは望ましくありません。そのため、まずはお互いを知ることから始め、打ち合わせを重ねています。また、INTA(※1)の機会に各社の商標担当者が集まることが分かったため、その場で商標担当者会議を行っています。今回のロンドンでも実施し、9回目の会議になりました。会議では、事例を共有したり、各社が抱えている悩みを持ち寄ってディスカッションをして一つの成果物を作り、共有する取り組みも進めています。–地域ごとの専門性を生かしながら、グローバルで判断をそろえているのですね。山本氏:はい。たとえば、あるブランドをアメリカで販売する場合、アメリカ特有の先使用の問題などがあり、判断が難しいことがあります。そのようなときは現地側に相談し、「自分はこう考えているが、どう評価するか」と確認します。逆に、日本のケースであれば、当社側からアドバイスすることもあります。そうした関係性を築くことで、各地域の専門性を生かしながら、グローバルにブランドを守っていくことができると考えています。(※1)INTA:International Trademark Associationの略称。商標やブランドに関わる専門家・企業などが参加する国際的な団体。商標実務におけるAI活用の現在地と標準化への期待–商標実務におけるAI活用について、現在の取り組みを教えてください。山本氏:正直に申し上げると、当社では現在、検討中の段階です。AIを活用した調査ツールの導入を検討した時期もありましたが、最終的には見送り、従来通りの方法で進める判断をしています。また、意見書の作成などにAIを活用できるとは思いますが、当社では代理人に委託しているため、現時点ではそうした活用も行っていません。ただ、活用の検討を止めてしまうと、いつまでも活用に至らないままになってしまいます。そのため、部内では、AIをどのように活用できるかを部署の目標に置き、しっかり考えていこうとしています。–商標実務において、AIに期待していることはありますか。山本氏:どの会社にも、これまで蓄積してきたデータがあると思います。それを読み込み、何かを導き出せるようになると良いのではないかと感じています。当部門は、私が入社した当時は3人ほどの組織でしたが、現在は10人ほどに増えています。3人で業務を行っていた頃は、誰がどのような仕事をしているのかが自然と見えていました。何かが起きたときにも、他の人のやり方を見て学ぶことができました。しかし、10人規模になると、隣の仕事がまったく見えないわけではないものの、どうしても個人に属人化していく部分が出てきます。そこでAIを活用し、「こういう事象が起きたら、こういう点に注意すべき」といった情報が出てくるようになれば、業務の標準化につながるのではないかと考えています。ブランドを守るための商標予算の考え方–将来への投資という観点で、まず商標予算について伺います。商標は、権利の手当てや模倣品対策など、どうしてもコストとして見られがちな面があります。一方で、ブランドを守り、将来の事業展開に備えるという意味では、未来への投資とも捉えられると思います。予算を確保するうえで、どのような点を意識されていますか。山本氏:幸い、当社には商標に対する理解が深い方が多いため、予算が大きな問題になることは、正直あまり多くありません。本当に恵まれた環境だと思っています。ただ、その環境に甘えてばかりもいられません。出願費用や模倣品対策の費用について、なぜそれが必要なのかをしっかり説明できるよう準備しておくことは重要です。そのうえで、事業部門と丁寧にコミュニケーションを取りながら進めています。–商標の調査・出願費用や模倣品対策費用は、どの部門が負担しているのでしょうか。山本氏:調査や出願の費用については、当部門で負担しています。つまり、コーポレート側で持っているということです。ただし、何でも受けていると費用は膨らんでいきます。そのため、必要であれば対応しますが、優先順位をつけながら、個別に事業部門と話をして進めています。権利行使や模倣品対策については、基本的には事業会社負担です。数百万円単位で費用がかかるケースもありますので、費用も含めて説明します。ただ、事業部門もブランドを守ることの重要性を理解してくださっています。ケースバイケースではありますが、「これは費用の問題ではなく、ブランドを守るために必要な対応だ」と理解いただけるケースが多いと感じています。–出願国や調査範囲の判断は、どのように行っていますか。山本氏:基本的には、事業部門とのコミュニケーションを踏まえて判断しています。先ほど申し上げた通り、各事業のマーケティングプランを早い段階で聞かせていただいています。その中で、どのブランドをどの国に展開していくのか、今後どのような可能性があるのかを確認しながら、必要な調査や出願を検討しています。たとえば、ウイスキーなどのスピリッツ事業では、『山崎』は販売しているけれど『白州』はまだ販売していない国もあります。ただ、その国で山崎を販売しているのであれば、他のブランドも将来的に販売できる可能性があります。そのため、権利の手当てに抜けがないかを確認し、必要なところを埋めていくようにしています。社内浸透と人材育成から考える、商標組織の未来–情報発信について、ブランド知財マネジメント部ではどのように考えていますか。山本氏:対外的な情報発信という点では、現状としては特に積極的に行っているわけではありません。ただ、他社では権利取得や訴訟の勝訴などを発信されている例もありますので、機会があれば当社としても取り組んでみたいとは考えています。–社内向けには、特徴的な情報発信をされていると伺いました。山本氏:はい。「ゆるっと知財バー」という取り組みを行っています。営業から当部門に異動してきたメンバーの発案がきっかけです。そのメンバーが「こういう仕事があることを知らなかった。もっと全社的にアピールしていくべきではないか」と言ってくれました。そこから、どのような取り組みができるかを一緒に考え、ゆるっと知財バーに行き着きました。就業後にお酒を飲みながら、特許も含めた知財部員が、知的財産に関わる話をする場です。難しい法律の話をするのではなく、直近で起きた事件や、転職してきたメンバーが前職の業界で感じた知財の面白さなどを、知財と絡めながら話しています。目的は、知的財産に親しみをもっていただくことです。そこから知財部門に異動したいという人が出てくるかもしれませんし、将来的に知財に関わる部署へ異動したときに、「知財ってあったよね」とコミュニケーションのきっかけになるかもしれません。この2年ほど、3~4ヶ月に1回程度の頻度で続けています。あまり大人数になると双方向性が失われるため、毎回10~20人程度のスモールな場として実施しています。社内のイベントスペースでスクリーンを映しながら知財部とブランド知財マネジメント部が話し、参加者はお酒を飲みながら聞ける形です。堅苦しい勉強会ではなく、知財を身近に感じていただく場として、今後も続けていきたいと考えています。–人材育成やキャリアについては、どのように考えていますか。山本氏:当社では、特に若手を中心に「10年3仕事」という考え方があります。基本的には、10年間で3つの仕事、3つの部門を経験するという取り組みです。私自身は知的財産しか経験していない人間ですが、他部門からブランド知財マネジメント部に来てくれたメンバーと一緒に働く中で、さまざまな知見を持ち込んでくれることの価値を感じています。当社には本当に多様な仕事がありますので、若いうちにさまざまな仕事を経験し、そこで得たものを知財の領域に持ち込んで活躍してくれることは非常に良いことだと思っています。ただ、ローテーションだけを重視すると、専門性が失われる可能性もあります。短期間で一定の水準までスキルを高める仕組みをつくっていかなければ、この取り組みは十分に機能しません。その点は課題として感じています。–AI時代において、商標担当者に求められる力は何だとお考えですか。山本氏:AIリテラシーは、これから非常に重要になると思います。新しい技術や動向に関心を持てる人でなければ、AIを使いこなすことも難しくなっていくのではないでしょうか。商標実務においても、世の中のトレンドを把握しておくことは欠かせません。社会全体に関心を持ち、それを自分ごととして捉え、業務に生かしていく力が必要だと思います。また、社内に向けて話をする際には、法律の話はどうしても難しくなりがちです。それを咀嚼し、短く、端的に、分かりやすく説明するコミュニケーション能力も非常に重要だと考えています。–最後に、2030年を見据えて、ブランド知財マネジメント部はどのように進化していくべきだとお考えですか。山本氏:まず短期的には、これまでの流れを途絶えさせずに継続していくことが重要だと思っています。しっかり調査し、出願し、類似品を排除していく。足元の実務を確実に行うことは、これからも欠かせません。そのうえで、当社を取り巻く環境として、海外での偽造品や類似品は非常に多く出現しています。個別に対応していくことも重要ですが、それをいかに効率的に行うかを考え、権利形成を進めていくことが、この5年間で特に取り組むべきテーマだと考えています。また、人の流動性が高まる中で、いかに短期間でスキルアップし、部門全体の業務水準を引き上げられるかも重要です。ブランドを守るための足元の実務を確実に行いながら、人材育成や業務標準化にも取り組んでいく。それが、これからのブランド知財マネジメント部に求められる役割だと考えています。 後列:コーポレートマネジメント本部 ブランド知財マネジメント部の皆さん「知財リーダーズ対談」とは知財に携わるすべての方へ、現場の「実務」と経営の「意思決定」をどう繋ぐかを問い続けるシリーズ企画「知財リーダーズ対談」へようこそ。各回、最前線で活躍する知財リーダーたちをゲストに迎え、その視点と決断に迫ります。【第1回:株式会社 明治】事業成長を牽引する商標組織の設計と2030年へのビジョン。こちらからご覧いただけます。 お問い合わせこちら