2026年8月1日、Trade Marks (Jersey) Law 2026が施行され、ジャージー島の商標制度は大きく変わりました。従来の英国商標登録を基礎とする「二次登録制度」から、ジャージー島独自の「一次登録制度」へ移行し、同日からジャージー島への直接出願と、マドリッドプロトコルによるジャージー島指定が可能になっています。注意すべきは、EU商標やEUを指定した国際登録(IR(EU))だけではジャージー島を保護できない点です。既存の権利は経過措置により新制度へ移行しており、今後ジャージー島での保護が必要なブランドは、直接出願またはマドリッドプロトコル経由で対応することになります。1. 新商標制度の概要2026年8月1日より、ジャージー島は英国商標に依存しない独自の商標登録制度へ移行しました。直接出願と、マドリッドプロトコルによるジャージー島指定がともに可能となり、従来の「英国登録ありき」の構造は解消されています。ジャージー島政府は制度改正の目的として、一次登録制度の導入、マドリッドプロトコルへの対応、既存商標保護の移行の三点を挙げています(出典④)。施行日の根拠は Trade Marks (Jersey) Commencement Order 2026(出典①)、新法の全文は Trade Marks (Jersey) Law 2026 として制定されています(出典②)。2. 新制度の主なポイント新制度の主な仕組みは以下のとおりです。項目内容出願ルートジャージー島への直接出願、マドリッドプロトコルによるジャージー島指定、既存の国際登録への事後指定審査・異議審査・公告を経て登録。異議申立期間は原則2か月(延長時3か月)存続期間登録日から10年、以後10年ごとに更新可能(登録日は原則ジャージー島出願日、優先権主張時は優先日)商品・役務分類ニース分類(国際的な商品・役務の分類体系)を採用。複数区分の出願も可能指定商品・役務の記載「明確かつ正確」な記載が必要。日本・英国・EUの表現の流用は避け、ジャージー島で保護したい範囲を改めて確認また、WIPOの公表によれば、2026年8月1日からマドリッドプロトコルによるジャージー島指定が可能となりました(出典⑤)。既存の国際登録を保有している場合は、事後指定(すでに保有する国際登録に新たな国・地域を追加する手続)によりジャージー島を追加することも可能です。3. EU商標・IR(EU)の落とし穴と経過措置EU商標およびEUを指定した国際登録(IR(EU))だけでは、ジャージー島を保護できません。これは既存ポートフォリオの見直しにあたり最も見落とされやすい点です。EU商標は2009年4月12日以降ジャージー島をカバーしておらず、IR(EU)も自動的にはジャージー島に及びません。一方、従来制度下では英国を指定した国際登録はジャージー島に自動的に及ぶものとして扱われてきました(出典⑥)。新法には経過措置が設けられており、主な取り扱いは以下のとおりです。既存のジャージー島登録商標:施行日に新しい登録簿へ自動的に移行。その後の更新はジャージー島法に基づいて行う施行日時点で審査中の再登録申請:旧法に基づいて処理され、登録された場合は新法上の登録として扱われる(登録日は英国商標の出願日または優先日)施行日前に英国で保護されていた英国指定の国際登録:施行日に、ジャージー島の「protected international trade mark(保護国際商標=英国での保護を根拠にジャージー島で保護される国際登録)」として扱われる。施行日前に英国への領域指定が請求され、施行後に英国で保護された国際登録も、英国で保護された日にジャージー島の保護国際商標として扱われる4. 日本企業の実務対応施行後の現制度を前提に、次の対応が考えられます。保護すべきブランドの棚卸し:英国登録はあるがジャージー島未登録の商標、EU商標・IR(EU)のみで管理している商標を確認する保護手段の選択:ジャージー島での保護は、直接出願、マドリッドプロトコルによるジャージー島指定、既存の国際登録への事後指定のいずれかで対応する独立した管理体制の整備:ジャージー島登録は英国商標や国際登録とは別に、更新期限・使用証拠・ウォッチングを独立して管理する※出典・参考資料① Trade Marks (Jersey) Commencement Order 2026施行日(2026年8月1日)の根拠法令https://www.jerseylaw.je/laws/enacted/Pages/RO-054-2026.aspx② Trade Marks (Jersey) Law 2026新商標法全文:登録制度・国際登録・経過措置等https://www.jerseylaw.je/laws/enacted/Pages/L-05-2026.aspx③ Trade Marks (Jersey) Order 2026分類・出願手続・異議申立・更新等の細則https://www.jerseylaw.je/laws/enacted/Pages/RO-057-2026.aspx④ Government of Jersey制度改正の背景・目的(政府コンサルテーション資料)https://www.gov.je/Government/Consultations/Pages/TradeMarksLaw.aspx⑤ WIPO — マドリッド協定議定書 締約国情報(英国・ジャージー島)マドリッド協定議定書の Bailiwick of Jersey への拡張https://www.wipo.int/wipolex/en/treaties/parties/remarks/GB/8⑥ Forresters IP —「Trade mark protection in Jersey: a clarification」EU商標・IR(EU)のジャージー島における保護に関する実務整理https://forresters-ip.com/trade-mark-protection-in-jersey-a-clarification/本記事は2026年8月時点の一般的な情報提供を目的としており、法的アドバイスを構成するものではありません。個別案件については専門家にご相談ください。 お問い合わせこちら