本稿のポイントUSPTO(米国特許商標庁)の審査期間短縮化により、再出願時に同一商標の重複登録禁止(duplicate registrations)、いわゆる"精神的拒絶"を受けるリスクが高まっています。再出願のタイミング戦略と、意見書対応の準備を事前に行うことが重要です。1. USPTOによる審査期間の劇的な短縮アメリカ商標出願の審査期間がここ最近で大きく変化しています。これまで最初の拒絶理由通知(Office Action)が発行されるまでには、おおよそ半年以上かかるのが通例でしたが、最近では出願から3〜4か月という短期間で拒絶理由通知が届くケースが増えています。現地代理人への確認によれば、USPTOが近年審査官を大幅に増員しており、審査期間の短縮を優先方針として掲げていることが背景にあるようです。審査期間の推移データ(First Action Pendency)USPTO公式ダッシュボードのデータによれば、審査スピードは以下のように加速しています。2024年度(2023年10月~2024年9月): 平均 8.0か月2025年度 第1四半期(2024年10月~12月): 6.1か月2025年度 第4四半期(2025年7月~9月): 5.6か月2026年度 第1四半期(2025年10月~12月): 4.5か月上記の通り、最初の拒絶理由通知までの平均期間を示す「First Action Pendency」は、2024年度(2023年10月~2024年9月)には平均8か月を要していました。しかし、2025年度(2024年10月~2025年9月)に入ると目標値を6.7か月に設定し、実績は第1四半期の6.1か月から第4四半期には5.6か月まで短縮されており、わずか1年で大幅に審査が加速していることがデータからも裏付けられています。なお、USPTOが掲げる長期目標は4.5か月以内であり、2026年度の第1四半期ですでに4.5か月を達成しています。直近で出願から4か月以内に拒絶理由通知を受領したケースがあり、今後もさらなる短縮が見込まれます。この変化は一見、出願人にとって好ましいニュースに映ります。しかし、再出願を検討している場合には、新たなリスクとして注意が必要です。2.再出願時に生じる2つのリスク例えば、登録から5年目の使用宣誓(Declaration of Use, Section 8)を所定期間内に提出できず、権利が失効することを容認したうえで再出願するケースを考えてみましょう。この場合、以下の2つのリスクが生じます。リスク1:同一商標の重複登録禁止(duplicate registrations)による拒絶従来のスケジュール感で再出願を行うと、拒絶理由通知を受ける段階で、元の商標がまだグレースピリオド(登録失効後6か月間の猶予期間)内に存続している場合があります。この状態では、先行する自社の商標出願と「実質的に同一」と判断され、同一商標の重複登録禁止(duplicate registrations)、いわゆる精神的拒絶を理由に拒絶される可能性が高まります。リスク2:第三者出願のリスク一方で、リスク1を回避しようと再出願を大幅に遅らせれば、第三者が間隙を縫って同一または類似の商標を先に出願してくる可能性も否定できません。第三者による同一類似商標の出願のほうが大きなリスクとなりえます。3.結論:タイミング戦略と事前準備が鍵再出願を行う場合は、これまでと同様に元の権利の期限前後のタイミングで出願することが基本方針として望ましいと言えます。ただし、審査期間の短縮化によって同一商標の重複登録禁止(duplicate registrations)、いわゆる精神的拒絶を受け、意見書提出などの対応が必要になるシナリオは、あらかじめ現地代理人と想定しておく必要があります。コストや対応スケジュールも含め、早めに戦略を立てることをお勧めします。アメリカ商標実務は、こうした制度運用の実態変化にも目を向けながら、柔軟に対応していくことが求められています。※出典:審査期間に関するデータはUSPTO公式ダッシュボード(https://www.uspto.gov/dashboard/trademarks/)その他の情報は2026年2月時点の現地代理人への確認に基づくものであり、最新情報は現地代理人または専門家にご確認ください。 お問い合わせこちら