2026年6月26日に可決された中国の改正商標法が、2027年1月1日に施行されます。今号ではドメインの観点、とくに第三者に先に取得されてしまった「.cn」ドメインへの影響に絞ってご説明します。今回の改正により、中国で商標登録をされていない企業であっても、ブランドの知名度を根拠に「.cn」を取り戻せる余地が広がります。これまで:「業種が違う」と権利行使が難しいケースもこれまで、未登録の周知商標(中国法上は「馳名商標」と呼ばれます)の保護は、同一・類似の商品や役務の範囲に限られていました。そのため、自社のブランド名を含む「.cn」ドメインを第三者に取得された場合でも、相手がまったく異なる業種でサイトを運営していると、「商標としての使用にあたらない」「中国では登録されていない」などと反論され、権利行使が難しくなるケースがありました。ブランドの知名度に「ただ乗り」しながら、業種の違いを盾にするという構図です。改正後:未登録でも、非類似の商品・役務まで保護が拡大改正商標法第21条は、この点を見直しました。未登録であっても中国国内で広く知られている商標について、非類似の商品・役務についても、他人による登録や使用を禁じられるようになります。主な要件は、次の2点です。公衆の誤認を招くこと権利者の利益を損なうことドメインを名指しした条文ではありませんが、「業種が違う」という理由だけでただ乗りを正当化することが難しくなるため、「.cn」のドメインの取り戻しを求める際の主張の土台が強化されると考えられます。ポイントは「中国での知名度」を証明できるか一方で、実務上の鍵となるのが、中国国内でのブランドの知名度を証明できるかどうかです。たとえば、次のような資料が重要になります。中国国内での売上広告出稿新聞・Webメディア等の報道記事展示会への出展実績SNS上での言こうした資料を、日付が分かる形で継続的に残しておくことが重要です。権利は自動的に認められるものではなく、証拠の積み重ねがそのまま結論を左右します。要注意:「.cn」の紛争処理には3年の期限がありますさらに注意したいのが、CNDRP(「.cn」の紛争処理手続)の申立期限です。ドメインの登録日から3年を過ぎた案件は、原則としてCNDRPでは受理されません。改正法によって主張できる材料が増えても、この3年を過ぎてしまえば、手続そのものが使えなくなります。裁判所での対応は可能ですが、費用も時間もかかります。つまり重要なのは、「自社ブランドを含む『.cn』が第三者に取得ていないかを早期に把握すること」です。法改正のメリットを実務で活かすためにも、第三者による「.cn」の取得を早期に把握することが重要です。2027年1月の施行前に確認したい3つのこと中国関連ドメインの保有状況を棚卸しする自社ブランドに関する「.cn」および中国関連ドメインについて、自社の保有状況と第三者による取得状況を棚卸しすることです。第三者保有ドメインの「登録日」を確認する 登録から3年の期限が近いものを洗い出し、優先的に対応方針を検討します。中国での知名度を示す資料を保存する売上、広告、報道、展示会、SNSなどの記録を、日付が確認できる形で蓄積します。GMOブランドセキュリティでは、中国を含む各国のドメイン登録状況の調査・監視から、取り戻し手続のご相談まで一貫してご支援しております。「.cn」の状況を確認しておきたいという段階でも構いませんので、お気軽に当社担当までご連絡ください。 |参考|・森仁司・馮逸倫.“中国:2026年「商標法」全面改正――在中日系企業の対応ポイント ―悪意出願規制の強化と、防御的商標に迫るリスク―”.One Asia Lawyers.2026-07-13.https://oneasia.legal/17525 (参照2026-09-03). ・中国互联网络信息中心(CNNIC).“China ccTLD Dispute Resolution Policy”.CNNIC.2019-07-26.https://www.cnnic.com.cn/PublicS/fwzxxgzcfg/201907/t20190726_70774.htm (参照2026-09-03). ・GMOブランドセキュリティ株式会社.“中国商標法改正案が可決、2027年1月1日施行へ”.GMOブランドセキュリティ.2026-07-13.https://brandsecurity.gmo/blog/2026/07/13/ahnfy_0gych1/ (参照2026-09-03).|引用|・馮永力.“全人代常務委員会で改正商標法が可決、2027年1月1日から施行”.ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース.2026-07-08.https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/049ecf71fd8adea6.html,(参照 2026-09-03)・日本貿易振興機構(ジェトロ).“「中華人民共和国商標法(2026年改正)」(2027年1月1日施行)の日本語仮訳等を掲載しました。”.ジェトロ.2026-07-08.https://www.jetro.go.jp/world/asia/cn/ip/notice/2026/0b6e065384566602.html (参照2026-09-03). お問い合わせこちら