モルディブ共和国において、同国初となる包括的な商標法が制定されました。 2025年11月11日、モハメド・ムイズ大統領が商標法案に署名し、商標法(法律第19/2025号)として官報に公布されています。本法は、従来の「新聞広告(Cautionary Notice)」に依存した慣習的な保護から、近代的な「登録主義」への転換を意味する重要な法改正です。1. 新商標法制定の背景とスケジュールこれまでモルディブには商標法が存在せず、新聞広告(Cautionary Notice)を掲載することで権利を主張する慣習的な運用が行われていました。今回の新法制定により、法的安定性の高い登録制度が正式に導入されます。施行までのタイムライン公布日: 2025年11月11日施行日: 2026年11月11日(公布日から12か月後)移行期間: 2026年11月11日 ~ 2027年11月11日(施行日から12か月間)2. 新商標法の主なポイント新法では、国際基準に準拠した制度設計がなされています。主な変更点は以下の通りです。先願主義の採用商標権は原則として「出願日」を基準に判断されます。審査においては、絶対的理由および相対的理由の双方が審査対象となります。また、著名商標についても明確な保護規定が設けられています。存続期間と更新有効期間: 10年間更新: 10年ごとの更新が可能権利行使(エンフォースメント)の強化従来の民事救済(差止命令、損害賠償、侵害品の廃棄・市場からの回収)に加え、より強力な措置が導入されます。刑事罰: 模倣品に対する刑事罰の導入水際措置: 税関での取締り強化実施規則の整備関係当局は、施行日から6か月以内に施行規則およびガイドラインを官報で公表することが義務付けられています。3. 【重要】既存の商標所有者への移行措置現在、モルディブで新聞広告(Cautionary Notice)により権利を主張している商標所有者に対し、移行期間(猶予期間)が設けられます。対象者: 新聞広告等により権利を主張してきた既存の商標所有者手続き: 施行日(2026年11月11日)から12か月以内に登録出願を行う効果: 期限内に出願を行うことで、新法下での保護継続が可能となる4. 企業・代理人がとるべき実務対応本改正は、モルディブ市場におけるブランド保護の透明性と実効性を大きく高めるものです。現地で事業展開を行う企業や、将来的な進出を検討している商標所有者は、以下の対応を早期に進める必要があります。既存商標の棚卸しモルディブで新聞広告(Cautionary Notice)により保護している商標の洗い出しを行う。再出願の準備 2026年11月11日から開始される12か月の移行期間内に、確実に出願できるよう準備を進める。知財戦略の見直し 新制度(先願主義・権利行使強化)を見据え、商標管理および権利行使体制を見直す。まとめ:権利維持のための「再出願」準備を今回の法制定は、モルディブにおける知的財産保護が「慣習(新聞広告)」から「法律(登録制度)」へと移行する歴史的な転換点です。最も注意すべき点は、これまでの新聞広告による権利主張が自動的に新制度へ引き継がれるわけではないということです。既存の商標所有者は、2026年11月11日からの1年間(移行期間)に、改めて登録出願を行う必要があります。この期間を逃すと、長年維持してきたブランドの価値を失うリスクがあります。対象となる企業様は、以下の3点を早期に計画してください。現行商標のリストアップ(どの商標を新聞広告で保護しているか)新制度での出願要否の判断(更新・維持するブランドの選別)現地代理人との連携確認(施行開始に合わせたスムーズな出願体制の構築)混乱が予想される制度導入初期において、確実な権利保護を行うためには、余裕を持った事前準備が不可欠です。 お問い合わせこちら