bridgestone

株式会社ブリヂストン

  • .貴社名(ブランドTLD)

「.bridgestone」で確かな安心を約束。
ブリヂストンが語るブランドTLDの真価。

株式会社ブリヂストン様

世界150以上の国と地域で事業を展開し、タイヤ・ゴム業界のリーディングカンパニーとして世界を牽引する株式会社ブリヂストン。同社は2012年、ICANNによる新gTLDプログラムのファーストラウンドにて、中国語の「普利司通」を含む3つのブランドTLDを申請しました。現在は「.bridgestone」および「.firestone」の2つのドメインを取得・維持しています。

ブランドTLDは2012年の「ファーストラウンド」で登録された約494件のドメインを含み、多くの企業で運用が続けられています。日本企業でも、2025年7月時点で40社46ドメインが取得されており、日本のインターブランドTOP15企業のうち約70%がブランドTLDを取得(グループ企業での取得も含む)。さらには、取得企業の約80%が実際にブランドTLDを使用しているという、驚異的な利用率を示しているのも特徴です。

同社が莫大なコストと手間をかけブランドTLDを取得した背景には、「ブランド保護」という大きな目的がありました。導入後、ブランドTLDはグループ全体のドメインガバナンスを強化し、顧客に安心・安全を届けるセキュリティ基盤として定着。未来のデジタル戦略を支える重要な「ブランド資産」へと進化を遂げようとしています。

ブランドTLDの導入にあたり、社内の合意形成はどのように進められたのか。10年以上の運用を経て見えてきた具体的なメリットや今後の展望とは。ブリヂストンの知的財産部門で商標・ドメイン戦略を担当する満田 翔氏と内田 耕平氏に、同社の歩みを語っていただきました。
(インタビュアー:GMOブランドセキュリティ株式会社 寺地 裕樹)

目次

ブランド保護を目的に取得を決断。円滑な社内合意を支えたもの。

――満田さんと内田さんの所属部署と、普段の業務について教えてください。

満田氏:
私たちは株式会社ブリヂストン 知的財産部門の、商標・標章管理推進課に所属しています。主な業務は、商標のクリアランス調査や出願・権利化、模倣品対策などです。それに加えて、グローバルでのドメインの登録・管理も担当しています。

――ブランドTLDの運用は同じチームで担当されているのですか?

内田氏:
ブランドTLDも通常のドメインも特に区別なく同じ担当者が管理しています。一方、ブランドTLDの活用(ネーミングなど)については、知的財産部門のほか、CI管理部、グローバル広報オペレーション部、ITリスク管理部からなるクロスファンクションチームで管理しています。

――「.bridgestone」「.firestone」といったブランドTLDを取得しようと考えた最初のきっかけは何だったのでしょうか?

満田氏:
2012年のファーストラウンドのタイミングで、主に「ブランド保護」の観点から取得の検討を始めたというのが最初のきっかけでした。検討を開始したタイミングで、GMOブランドセキュリティさんからいち早く情報提供をいただき、申請の準備を始めました。

株式会社ブリヂストン 満田 翔氏(知的財産部門 商標・標章管理推進課長)

満田 翔氏(知的財産部門 商標・標章管理推進課長)

――当時は3つのドメインを申請されましたよね。

内田氏:
はい。弊社がグローバルで展開する「Bridgestone(ブリヂストン)」と「Firestone (ファイアストン)」に関する「.bridgestone」と「.firestone」そして中国で他者に無断で取得されることを防ぐ目的で中国語表記のブランドTLDを申請しました。その後、他者の申請がないことが確認できたため、申請を取り下げ、結果として2つのブランドTLDを取得・維持する形となりました。

――ブランドTLDは新しい概念であり、ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)に支払う費用も185,000米ドルと決して安くありませんでした。ブランドTLD取得に際して経営層を含む社内での合意形成に、苦労したというエピソードを多くの企業で耳にしています。ブリヂストンではいかがでしたか?

満田氏:
実のところ、社内の合意形成は比較的スムーズに行われたと感じています。「積極的なプロテクション(権利保護)」と「ブランド/マーケティング観点での企業価値向上に向けた利用」という二つの観点から、ブランドTLDの取得が決まりました。

内田氏:
もちろん高額の申請・運用費用は検討課題になりましたが、投資に見合うようブランドTLDの価値を高めていこうと考えました。費用処理など社内の調整にそれなりの時間と労力は要しましたが、手順に沿って淡々と進めることができたと思います。

満田氏:
GMOブランドセキュリティさんから、ブランドTLD取得の重要性に関する情報が多く提供され、それをすぐ社内に展開していました。そのおかげで、大きな反対につながらなかったのだと思います。

――お役に立ててよかったです。取得に関する稟議は、どの程度のスピードで承認されたのでしょうか?

内田氏:
数日程度で決裁が下りました。事前にグループのブランドに関わる基本方針や施策を審議するブランド推進総合委員会といった上位組織で議論を重ねており、役員クラスには事前に説明が済んでいたのが大きかったです。前広な準備を重ねた結果、素早く手続きを完了できました。

株式会社ブリヂストン 内田 耕平氏(知的財産部門 商標・標章管理推進課)

内田 耕平氏(知的財産部門 商標・標章管理推進課)

――素晴らしいスピード感ですね。申請プロセスの実務面で、何か困難はありましたか?

満田氏:
信用状の発行など、必要な情報の収集では財務部門と綿密に連携しました。普段から比較的近い距離でやり取りをしていたこともあり、社内手続きにおいてつまずいた場面は少なかったと思います。とはいえ、申請に必要な書類は多く相応の工数が発生しました。GMOブランドセキュリティさんと一緒に一歩ずつ進めていったというのが実際のところです。

プロジェクトを進めるにあたっては、「新gTLD運用準備委員会」という混成チームを組成しました。私たち知財部門が中心となりつつ、広報、ITといった関連部門からメンバーを選出し、全社的なプロジェクトとして対応に当たりました。

――ブランド保護という明確な目的意識と、関係各所を巻き込んでの準備が、円滑な合意形成につながったのですね。
2012年に実施されたファーストラウンドは、ICANNにとっても初の取り組みということもあり、ドメインの取得に想定以上の時間がかかったという背景がありました。その点について、社内で不安の声などはあがりましたか?

内田氏:
確かに、想定よりも時間がかかっているという認識はありました。それでも、GMOブランドセキュリティさんがパートナーとして関わってくれていたため、あまり心配することはありませんでした。

全社的なブランドTLD活用を開始。導入でわかったメリット

――取得したブランドTLDは、どのように活用を進められましたか?

内田氏:
当初はブランドをしっかり保護するという「守り」の目的が先行していたため、活用については「取得後にみんなで考えていこう」というスタンスでした。その中で、「イベントでブランドTLDを使用する」という方針を立てました。

例えば、弊社がワールドワイドパートナーを務めたオリンピック・パラリンピックの開催期間中、スペシャルサイトにブランドTLDを採用しています。

その後、2023年に「全社的にブランドTLDを本格活用していく」と宣言しました。このタイミングでブランドTLDの活用に舵を切ったのは、デジタルトランスフォーメーション(DX)やデジタルを活用したソリューションビジネスの推進により、新規ドメインの取得申請が大幅に増えてきたからです。

「.com」などをバラバラに取るのではなく、ブランドTLDを使ってガバナンスを強化していこうという方針に切り替えていきました。

――貴社にとって重要な局面で、活用方針を明確に打ち出していったのですね。ブランドTLDの利用によって、具体的なメリットを感じておられますか?

インタビュアー:寺地 裕樹(GMOブランドセキュリティ 営業・マーケティング事業本部)

寺地 裕樹(GMOブランドセキュリティ 営業・マーケティング事業本部)

内田氏:
ブランドTLDのメリットは、ドメインのガバナンス強化という点で最もシンプルで効果的なソリューションであるということでしょう。新規取得をブランドTLDに集約することで、無駄なドメインの乱立を防げています。

グローバルに展開しているドメインネームのガイドラインも見直し、これまで取得してきた保護目的のドメインをどこまで維持するかを再整理しました。今では本当に最低限のものだけで良く、基本的にはブランドTLDのみで問題ないという考えが浸透しつつあります。

満田氏:
セキュリティ面での効果も見逃せません。私たちとしては、この点がもっともブランドTLDを使いたいと感じるポイントであり、今後さらに効果が出てくると考えています。

内田氏:
ドメインは、弊社のすべてのステークホルダーの皆様と、デジタル上でコミュニケーションをとる重要な接点になります。私たちはそのタッチポイントを、安心・安全なものとして提供する責任があります。その点、「.bridgestone」で終わるURLは、誰が見てもブリヂストンの公式サイトだと直感的にわかります。これは非常に大きな利点です。

当社では毎月のように、タイポスクワッティング(綴りをわざと間違えた偽サイトのドメイン)などドメインの不正使用が発見されます。「.bridgestone」への移行が進めば進むほど、お客様は不正ドメインに対して心配をする必要がなくなります。

満田氏:
最終的には、ブリヂストングループが使用するドメインを「.bridgestone」に集約、フィッシングサイトなどのリスクを排し、お客様が安心して弊社ウェブサイトにアクセスできる環境を作る。それが私たちの目標です。

――そのブランドのドメインを一つ覚えておけば、安心・安全に情報を獲得できる。その良さがブランドTLDにあると言えますね。

今後の課題は認知度

――逆にブランドTLDを導入・運用する中で見えてきた課題や、予期せぬトラブルなどはありましたか?

内田氏:
いくつかあります。ひとつはユニバーサル・アクセプタンス(UA)の問題です。ブランドTLDを用いたメールアドレスを一部で使い始めたのですが、海外出張先でホテルの予約システムにそのメールアドレスを入力すると、エラーではじかれてしまうという事象が起きました。

株式会社ブリヂストン 内田 耕平氏(知的財産部門 商標・標章管理推進課)

満田氏:
航空会社のチケットが取れないということもありました。1〜2ヶ月の間に連続して発生したので、ドメイン管理担当者としては青ざめましたね(笑)。

――それは焦りますね……。ブランドTLDに対応していないシステムは、世の中にまだまだ残っているということですね。

内田氏:
その際は、既存の「bridgestone.com」のエイリアスを設定することで回避しました。幸い、その後は同様の報告はありませんが、今後メールアドレスとしての利用が増えてくるとまた問題が起きるかもしれません。当面はこういった事態を想定した利用を考えなければならないと思います。

――UA問題は、弊社のような事業者やICANNも一体となって解決すべき重要な課題だと捉えています。何かお困りの際は、いつでもご相談ください。それ以外に課題と感じる点はありますか?

内田氏:
やはり「認知度」でしょうか。ユーザーの皆様はもちろんですが、例えばウェブサイトを開発する際に、ベンダーの担当者様から「ドメインの『.com』にあたる部分は何ですか?」と聞かれることがあります(笑)。業界内での認知度が、さらに広まっていくとより利用しやすくなると感じます。

――認知度について、国内外での温度差のようなものは感じますか?

内田氏:
感じます。意外だったのは、アメリカよりも欧州のほうがブランドTLDにネガティブな反応だったことです。当時、「普及していないから」というのが理由で、現地の関係部署に協力してもらうのに少し時間がかかりました。

満田氏:
逆にアメリカの担当者は、ブランドTLDの存在に興味を持つ傾向が強いです。

――国や地域による文化の違いもあって面白いですね。

AI時代を見据え“信頼の発信源”へ

――ブランドTLDの今後の活用や展開についてお聞かせください。

満田氏:
「本物認証」という意味合いで、使えるシーンはかなりあるのではないかと考えています。例えばオンラインでタイヤを販売する際、そのサイトがブリヂストンの正規販売店であることをお客様に証明する。こうした活用方法を積極的に検討・実施していきたいです。

株式会社ブリヂストン様 満田 翔氏(知的財産部門 商標・標章管理推進課長)

内田氏:
こうした取り組みを通じて、お客様が安心して当社の商品を買っていただける環境を整えていきたいですね。

――代理店様を含めたサプライチェーン全体でのブランド体験を統一し、ガバナンスを強化していかれるのですね。最近ではAIの文脈でも、情報の「信頼性」がより重要視されています。その点についてはいかがでしょうか?

内田氏:
AIの活用においてもブランドTLDは情報の信頼性確保に重要な役割を果たすと考えています。今後、人々は自ら情報を探しにいくのではなく、AIがユーザーに最適な情報をプッシュ型で提供する時代が来ると予想されています。そうなった時、AIが生成・提供する情報やコンテンツの出所が明確であることは、非常に重要です。「.bridgestone」であれば、「公式かつ安全な情報発信元」であることが一目瞭然です。このようにブランドを直接表現できるブランドTLDはブランディング戦略の重要な要素でもあります。

そういう意味でも、オンラインに出すコンテンツの「出所」としてブランドTLDを使用することは、必須の流れだと思っています。

――貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。最後に改めて、ブランドTLDを取得して良かったか聞かせてください。

満田氏:
間違いなく(当社ブランド力とお客様の安全面で)良かったと思っています。

内田氏:
ここにきてようやく、ブランドTLDが持つメリットを本格的に享受し始めている段階かなと感じています。ブランドTLDは使用シーンが増えれば増えるほど価値を増す存在です。

満田氏:
この価値を最大化するためにも、さらなるスピード感をもって既存のサイトのドメインを置き換えていきたいです。

左から株式会社ブリヂストン様 満田 翔氏(知的財産部門 商標・標章管理推進課長)、内田 耕平氏(知的財産部門 商標・標章管理推進課)、GMOブランドセキュリティ株式会社 寺地 裕樹( 営業・マーケティング事業本部)
GMO「.貴社名」取得・運用支援サービス(ブランドTLD)